プロ野球からアマチュア野球まで、野球を縦横無尽に語ろう

7月16日(火)

◇第15日 7月16日(火曜日) 第15日は、記事が長くなるため、2回に分け
                 て掲載します。

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 F女史・ネイト氏夫妻を交えた4人で、ホテル近くの中華料理店で昼食を摂る。1人前のチャーハンが日本人の感覚では軽く3人前のボリューム。これを各自が1つずつ頼んでしまった。味はまずくはないが、私が作れる程度。

 ネイト氏の運転でアセンズへ。山を越え、1時間半くらいかけてようやくオハイオ大学へ着く。
 大学内にあるボブウレンスタジアムを舞台に繰り広げられているのは大学のサマーリーグ、グレイトレークスリーグで、ここへ来たのはサマーリーグ観戦と、同リーグに所属するサザンオハイオ・コッパーヘッズのGM、アンドリュー・クライツァー氏(オハイオ大学教授)を取材するためだ。

 クライツァー氏は私の友人・ノビー伊藤氏がオハイオ大学に留学していたときの恩師で、来日した折には広島対阪神の試合を球場で見るほどの親日家としても知られている。日本にいるときにメールで連絡を取り、是非取材させてほしいと頼むと、快く承諾していただいた。
 このクライツァー氏が日米の違いについてこんなことを言う。

「画一的な日本人に対してアメリカ人は千差万別という違いはあるが、日本人はプレーヤーとしての自覚が高い。最近目立つメジャーリーガーの個人主義を、アメリカ国民は恥ずかしく思っている。チームプレーができる選手ほど尊敬され、イチローがそういう選手です。本当のヒーローは成功を見せびらかさない。そういう姿勢を見たいです」

 オハイオ・コッパーヘッズ対メアリーズビル・モーラーズベースボール戦では、コッパーヘッズの8番に日本人のカズこと永井一彦が起用されていて驚かされた。
「日本人は力より技」という先入観があり、技巧的なプレースタイルを想像したが、いい意味で予想はくつがえされた。180センチ86キロの体格から、バットが遠回りしない打撃フォームで右中間方向へ強い打球のヒットを放ったのを見て、話を聞きたいと思った。

 出身は松江南高校。97年の島根大会2回戦で敗退したのち、すぐにノースカロライナ州グリーンズボロのクリムズリ高校に留学。1年留年したのちにグリーンズボロ大学に進学。さらに監督と意気投合したという理由でノースフロリダ大学に転校。数学・物理学を専攻しながら野球を続けている。
 60ヤード(約55m)6.8秒の脚力と、ライトからの強肩を誇るアスリートタイプで、取り組んでいるのは体重93キロの増量。秋は筋トレばかりですと笑い、ベンチプレスは260ポンド(118キロ)と目的にブレがない。
[註]体重の増量は2012年現在の日本球界のトレンドと言っても過言でないが、2002年当時、アメリカでは大学生が当たり前のこととして口にし、自らの意志で筋トレを行っていた。日米の差はまだこの年数分、離れているのかなと考えさせられる。

 チームの監督からバッティングで助言されるのは、「バットがストライクゾーンに長くあればあるほどいい」ということ。サマーリーグについては「学校とか筋トレの話とかいろいろな情報が交換できていい」と、初めての参加を有意義なものと受け止めているようだ。
 好きな選手はブレーブスのショート、ラファエル・ファーカルとツインズのセンター、トリー・ハンター、さらにマリナーズのイチローで、同じ島根出身(1学年下)の和田毅(浜田→早大)の話をすると、日本の情報が入っていないのか、「そんなに騒がれているんですか」と驚いていた。
 日本のプロ野球に挑戦し、最終的には母校・松江南で監督をやりたいと希望を洩らし、「早く帰って両親に恩を返したい」と言われたときには、なぜかホッとした。合理的ではない日本人的な“情”が垣間見えたからだろう。

 21時30分頃、コロンバスに帰る。イースタンのステーキハウスで1.2ポンド(約544グラム)のステーキを頼み、サイドメニューはトマト&オニオン。これをビールとワインで胃袋に流し込む爽快感。浜寿司もいいが、私はこっちのほうがいい。


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 以下、アンドリュー・クライツァー氏の話。

「NCAA(National Collegiate Athletic Association=米国大学体育協会)のルールでは、サマーチームは4人以上同じ大学から来てはいけないことになっています。コッパーヘッズの場合は、オハイオから4人来て、他の選手は各大学の監督の推薦で選ばれた選手ばかりです。
 地域的には、ミズーリから東側、中西部のインディアナ、オハイオ、フロリダ、メリーランドから来ています。ノースフロリダからはカズ永井が来ている。彼のために私の妻が日本食を作っています。
 このリーグは結成から12年目になります。涼しくなる19時から試合ができればいいんですが、照明施設がないので17時スタートになっています。MLBからの支援は、今年はボールの支給だけです。非利益団体が税金の控除の対象になりますから。
 ビジネスマンにスポンサーになってもらってスタートしました。大学は球場を提供することで運営に関わり、スポーツ経営学を学ぶ学生は、野球ビジネスがどう動いていくのか、スタッフとして勉強していきます。セールスプロモーション、スポンサー集め、設備の管理、いろいろありますね。こういうところが、他のリーグとグレイトレイクスサマーリーグの違うところでしょうか。
(ケープコッドリーグでは選手が寄付を募るように、ポリバケツ持参で観戦料を集めていましたが)そういう寄付行為のような真似をするのは感心しませんね。入場するとき、しかるべき場所で5ドル受け取るべきです。
 昨年(2001年)は初めてオールスターゲームを行い、800人の観客を集めました。この実績で地元の企業を回り、スポンサーになってもらうよう説得します。それをやるスタッフは、私が大学で教え、このサマーリーグでインターンとして働いている約30人の生徒たちです。彼らが貴重な人材としてメジャーリーグに供給されていきます。メジャーリーグも大学のサマーリーグも、規模に差はあってもやることは一緒ですからね」

◇斎藤さん
 オハイオ大学大学院の1年生。クライツァー先生のもとコミュニケーション学を専攻している女性で、高校3年のとき交換留学で渡米。1年帰って卒業して、そのあと再度渡米して現在(02年)に至っている。
 「アメリカのほうが勉強しやすいと思いました。やりたいことが具体的な学問としてありましたから」

◇山羽教文さん
 クライツァー氏の生徒で、早大時代は宿沢広朗監督のもとでラグビー部の主将を務めていた。生活を律し、自分を律するという点では厳しい時期だったが、やりがいはあった。それにくらべて、鉄鋼を担当した6年間の商社時代は物足りなかったという。
 「スポーツマネジメントを学びたいと思い、ここ(オハイオ大学)に来ました。地域型スポーツクラブの構造や環境を日本に普及させるために働きたいと思っています」

 ここからは再び、クライツァー氏に話を続けてもらう。

「9月から翌年6月まで、選手の学力を上げるためにスタディテーブル(練習後数時間、勉強の時間を設けること)を行っています。勉強ができない子にはチューターという家庭教師をつけることもあります。
 どうして練習時間を削ってまで勉強しなければいけないのか、それはスカラシップ(奨学金)の問題があるからです。スカラシップは授業料、寮費、テキストブック代ごとに支払われ、この3つすべてを受けることができると、年間2万ドル(約200万円)支給されます。
 スカラシップを得るためには、GPAと呼ばれる成績の5段階評価(ABCDF)で一定の成績を得ることが条件になります。当落線上のC評価より下がるとスカラシップを得られなくなる恐れがあるので、選手は必死になって勉強するし、私たちも尻を叩きます。
 スポーツ選手の卒業率は全米平均でだいたい50パーセントくらいで、私たちのオハイオ大学はそれよりも多い57パーセントです。
 スカラシップには問題があります。バスケットボールやアメリカンフットボールは人気があって観客も多いので、大学はいい選手を集めたがります。そういう選手ほどスカラシップを多く得ることができるので、他のスポーツに配分される率が下がります。野球だと、バスケットボールやフットボールの2分の1か3分の1くらいだと思います。

 サマーリーグは全米で8リーグあります。アラスカ、カリフォルニア、ケープコッド、オハイオ、バージニア……(以下聞き取れなかった)。参加する学生の数はどんどん増えています。選手のメリットとしては、◇長い期間野球ができる(夏はオフなので)◇他の学生と交流できる◇スカウトにアピールできる、などでしょうか。
 オフ期間で一般学生がいないため学生寮に宿泊でき、主流はホームステイです。参加する学生は昼間働いて、プレーするのは夕方から。仕事は私が紹介しています」
[註]オハイオ大学の卒業生には“歴代最高の三塁手”と謳われているマイク・シュミット(元フィリーズ)や、ニック・スウィッシャー(ヤンキース・外野手)などがいる。

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