プロ野球からアマチュア野球まで、野球を縦横無尽に語ろう

7月14日(日)

◇第13日 7月14日(日曜日) 第13日は、記事が長くなるため、2回に分け
                 て掲載します。

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 East Cobb Complexに来ている。3面のグラウンドがあり、ここでWWBA Senior Division World Series(以下、選手権)が一斉にスタートするというせわしなさ。昨日の雨のため、全試合6イニングで行わるというのも、日本では考えられない。

 この選手権を主催しているパーフェクトゲームUSAのスタッフに日本人がいる。高校時代、ケガでまっとうできなかった野球への思いを、アメリカ留学で果たそうとした安武賢太郎さんだ。

 この安武さんの留学の斡旋をしたのが、社会人野球「あけぼの通商」の元監督。安武さんのように、アメリカで野球をやろうとする若者に無償で留学の世話をしている人で、元高校球児をアメリカの大学に何人も送り込んでいるらしい。

 この2002年に、日本人では初めてMLB(ロッキーズ)からドラフト指名(24巡目)された坂本充もその1人で、安武さんは「クレージーの極みです」と笑う。アメリカで野球に関わっている人は、こういう熱い人が多い。

 安武さんがそばにいてくれたおかげで、アメリカの高校野球事情がだいぶわかった。まず本大会が行われる前に「1/3~5」「1/10~12」「4/20~21」「5/14」「6/8~9」「6/14~16」にShowcaseと呼ばれる大会がある。ショーケース、つまり選手の品評会である。

 大学の指導者やプロのコーチ、あるいは代理人(エージェント)に、自分の実力を披露する大会と言ったらいいだろうか。日本の高校野球のように、「教育の延長に野球がある」という受け身の姿勢ではない。力を見せつける、という攻めの姿勢に特徴がある。

[註]代理人がアマチュア野球に関わるというのが、アメリカでは珍しくない。ケープコッドで会ったエージェントの卵、ダンが日本の12球団名をすべて言えたように、日本をマーケットにして選手の売り込みを活発化させる意図が、この時期、末端にまで浸透していた。

 ショーケースで目についた好選手を集めて行われるのが本大会をはじめとするChampionshipで、これ以降は9月に3回、10月に3回行われる。各ショーケースで150~250人の選手を集め、本選手権はそこから選りすぐった806人を40チームに振り分けて行われる。

 参加費用は1チームが1000~1500ドル(16万円×40チーム=600万円)で、選手の詳しい情報が載っている「SCOUT BOOK」(選手名簿)が、1部100ドル(1万1000円)で売られている。日本とまったく異なる運営システムである。

 またスカウトブックには、ポジション、身長・体重、利き腕、生年月日、卒業予定年、在籍高校名、住所、電話番号、父母名とともに、学業成績(GPA/Act/Sat)が掲載されている。「GPA/Act/Sat」が「3.50 1150」なら、アメリカ人なら誰でも「この子は勉強できるわね」とか「勉強苦手みたいね」と、ひと目でわかるようだ。

 驚いたのはこれだけではない。本大会が始まる前に、野手を対象にした「運動能力テスト」が行われるのだが、その内容が実にスカウトなど“獲る”側に都合がいい。

160ヤード(約55メートル)走のタイム測定
2キャッチャーの二塁送球のタイム測定……トップクラスで1.75秒
3ライトに集められた外野手の二塁(1本)、三塁(2本)、本塁(2本)へのタイム測定……スピードガンで送球の速度が計測される。本大会のMAXは95マイル(152キロ)。
4一塁手以外の内野手はショートのポジションに集められてノック……正面、左右、ボテボテのゴロを逆シングルキャッチ、ランニングスローも混ぜて処理する。送球スピードはトップクラスで88~90マイルくらい。
5一塁手は三塁へのスローイング

 これらの能力測定が行われるため、大会が始まるとスカウトたち獲る側は、見る対象を投手に絞る。野手はもう能力を見極めたから大丈夫、ということらしい。

 なお、フリーバッティングは各選手が12スイング(前に飛んだ打球だけカウント)を木製バットで行う。どこまでいっても獲る側に都合がいい、見事な品評会ではないか。


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 East Cobb Complexには3面のグラウンドがあり、それぞれ非常に近接しているので、はしご観戦ができた。その分、1試合に集中できないきらいがあり、10年たった今思い起こせば、はしご観戦をせず、これはという選手がいた試合を集中して見ればよかったと反省している。

 最初に見た試合は、プエルトリコレイダース対ABDブルドッグス。驚いたのがプエルトリコベンチ内の空気で、全員でリズム感よく手を叩き、歌を歌いながら応援していた。

 延長7回表には、こんなことがあった(6回が終わり延長に入ると0死二塁から試合が始まる)。1死三塁でABDの打者が一塁ゴロを打ち、これを一塁手がホームへ低投して1点を取られると、プエルトリコの監督が激怒し、一塁手を怒鳴り散らしているのだ。

 その裏にプエルトリコが0死二塁の場面で3番打者が送りバントをし、相手投手の野選(フィルダースチョイス)でオールセーフ、さらに投手の一塁けん制悪送球で同点になると、一転して大喜びする変わりよう。チームが勝ってどうこうの大会ではないと思うのだが、勝負への執着が思いのほか激しい。

 勝敗にこだわれば、バントが多くなる。8回表、ABDが無死二塁で3番打者がバント、さらに満塁からスクイズバント失敗などで無失点に終わると、その裏プエルトリコがバントでチャンスを広げるという展開。アメリカ野球はバントしない、と言う人にこの光景を見せてやりたかった。
 
 バックネット裏には「Scout&Coaches only」の貼り紙がある。スカウトでも大学の監督でもない人間は入ってはいけないエリアのようだが、文句を言われない限り居座ろうと決めた。

 スカウトらしき2人が、バッティング談義に耽っているシーンも見た。左打者の右ヒジが投手方向を向いているのはいいか悪いか、という話らしく、身振り手振りで熱中している。日本でもこういう光景は見ることがあり、妙に心が落ち着く。

この試合に出場した主なメンバー

プエルトリコ レイダーズABD ブルドッグス    
(8)Diaz,Julio   (4)Guttierrez,Chris
(4)Cuadrado ,Phillip(6)Sanabria,Pedro
(5)Rodriguez,Luis (8)Faulkner,Nathan
(3)         (1)Zinicola,Zechary
(2)         (9)Rizzo,Cody
(9)         (5)
( )Donate,Miguel  (3)Gardner,Jerad
( )         (7)Croxton,Brad
( )          (2)McColgan,Matt

 5人のプエルトリコ選手の名前がわからなかったのは、ガイドブックに記載された背番号とアナウンスされた名前が一致せず、本人確認ができなかったためである。

 決勝戦などは、選手が勝手に背番号の違うユニフォームに着替えるため、よけい本人確認に苦労した。

 このメンバーの中でプロ入りが確認できたのは、ABDの先発、Zinicola,Zechary(ジニコーラ・ザカリー)。この試合では4番・投手で出場し、投手としてはストレートが92マイル(147キロ)を計測して目についた。

 安武さんの評価も高かったが、アリゾナ州立大学進学後、06年にナショナルズのドラフト指名でプロ入りしながら、パッとした活躍をしていない。このレベルの投手が実績らしい実績を残していないところに、アメリカ野球の奥深さを感じる。

 準々決勝は、ABD・ブルドッグス対オースティン・ベースボールクラブブルー、イーストコブ・アストロズ16対モバイル・ベイソックスの2試合をはしご観戦で見た。ジニコーラが、この試合でも5番・指名代打で出場し、タフさをアピールしていた。
 決勝はフロリダ・ボンバーズ対オハイオ・ウォーホークス戦。

決勝戦のスターティングメンバー

オハイオ・ウォーホークスフロリダ・ボンバーズ  
(4)Antonelli,Matt( )Manasa,Brandon
(6)Demmink,Herman(6)Cabral,Marcos
(5)Winfree,David(8)Hernandez,Willy
( )Smith,Derrick(5)Sanchez,Gaby
( )Copeland,Josh(D)Vazques,Camilo
(3)Gac,Ian    ( )Braithwaite,Aaron
(2)Bernstein,Matt(3)Contreras,Lester
( )Wandless,Scott (2)Rodriquez,Eddy
(9)Batten,JoJo   (4)Meneses,Alex
(1)Meier,Justin  (1)Diaz,Alain

 フロリダの5番カミーロ・バスケスや捕手のエディ・ロドリゲスがよかったが、それよりも注目したのが、準決勝で先発したフロリダのMulligan,Nolan(ノーラン・マリガン)。

 その試合で記録したストレートのMAXが86マイル(138キロ)と物足りなかったものの、ヒジを柔らかく使ったオーバースローから低めに伸びるストレートと、高角度から切れ込んでくるスライダーが素晴らしく、体重が増えれば大化けすると思った。

 このマリガンも、フィリーズでの記録がわずかに残っている程度で、目立った活躍をしていない。アメリカの高校生をきちんと批評するには、さらなる年季と言葉(アナウンスを聞き取るヒアリング能力)の勉強をしないと無理だなと痛感した。

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