プロ野球からアマチュア野球まで、野球を縦横無尽に語ろう

道都大対東洋大

2011年6月10日(金曜日)くもり 神宮球場

全日本大学野球選手権

道都大対東洋大

藤岡貴裕と牧田和久に共通する技

 藤岡貴裕(4年・投手・左左・183㌢/85㌔・東洋大)は、説明のいらない11年ドラフトの顔である。最後に取っておく予定だったのをここで紹介するのには理由がある。プロの投手と比較をするためである。

 実はこの試合、7回裏の終了を待たずに退席した。西武ドームで行われる西武対広島戦を見るためである。

 話を一挙にプロに持っていく。西武・牧田和久、広島・前田健太の両先発は素晴らしかった。とくに牧田は「素晴らしかった」という生ぬるい誉め言葉では表現できないくらい素晴らしかった。

 127~132キロで低めに伸びるストレート、腕を振っているのにフワッとした軌道で打者の腰を折る94、5キロのカーブ、さらにここに110キロ台のスライダーが加わり、広島打線を幻惑。

 どれもこれも打者を幻惑する素晴らしいボールだが、牧田の場合はそれだけで終わらない。ここに“時間”が加わる。いわば「四次元投法」とも言うべきテクニックこそ牧田の真骨頂なのである。

 4回表、2死一塁(走者は丸佳浩)の場面で打席に立つのは広島の4番・栗原健太。牧田は当然クイックで投げるのだが、1、2球は1.35秒、1.30秒と普通より遅いクイック。そして、0ボール・2ストライクに追い込んだあとの3球目は一転して1.06秒のクイックで投げ(スライダーだったと思う)、栗原を空振りの三振に打ち取るのである。

 これはほんの一例。こういうことを常に考え、いろいろな場面で使い分けているのが牧田の凄いところである。

 藤岡にも、牧田に通じる「時間を操る術」を感じることがある。昨日、大瀬良大地のところで書いた投球タイムを再び登場させる。

 09年6月11日の大学選手権、九州共立大戦、藤岡の投球タイムは1.6秒ほどだった。それが1年後の10年9月21日の国学院大戦では1.85~1.92秒まで長くなっている。

 「以前は流れるように投げていて、スピードは148キロと同じでも、そこまで速く感じられずに打たれてしまうことがありました。今は足を上げるとき、こっち(軸足)のほうに溜める意識を持っています」

 これは雑誌『アマチュア野球30号』(日刊スポーツ出版社)取材の折に聞いた藤岡の言葉である。私は常々、打者と同じように投手もステップを急がないことが大事だと思い、そう言うと、藤岡はこんなことを話してくれた。

 「頭の中では、間(ま)をずらせばバッターは打ちづらいと思うんで、その分、間を置くようにしています」

 さらに「間はどこで調節するんですか?」と聞くと、「ステップを踏み出すとき、相手がどういうタイミングで打ってくるのか見据えながら」と答えてくれた。時間を操る意識の高さが伝わってくる言葉ではないか。

 11年6月10日に話を戻すと、この日の藤岡は「ストレートの意識づけ」の徹底がみごとだった。1回、ストレートをこれでもかと多投してストレートのイメージを刷り込み、2回からは一転して変化球を多投して相手打者のタイミングを狂わせにかかる。

 また中盤で目立ったのは低めストレートの伸びの素晴らしさで、これを相手に刷り込み終わったと見るや、同じ低めからボールゾーンに落とすスライダー、チェンジアップを多投。打者のバットは面白いくらい空を切った。

 昼間、藤岡、大瀬良を見て、夜に前田健、牧田を見る贅沢さ。いずれも間(ま)の重要さを知り尽くし、いかに相手打者のタイミングを狂わせるかに主眼を置くみごとなピッチングである。

 ちなみに、牧田にフルスイングをさせてもらえなかった広島打線、翌11日はロッテの渡辺俊介に牧田同様(と想像する)の技巧を見せられ、「5安打、1三振、四死球0、失点1」の完投負けを喫してしまった。気の毒としか言いようがない。

powered by Quick Homepage Maker 4.81
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional

UA-28613913-1