プロ野球からアマチュア野球まで、野球を縦横無尽に語ろう

東浜  巨

2012年4月20日(金曜日)くもり 神宮球場

東都大学リーグ

亜細亜大2-1日本大

 この日より2日前の4月18日(水曜日)、亜大のエース、東浜巨(4年・右投右打・181㌢/73㌔)が今季初勝利、通算27勝目を挙げた。リーグ記録更新中の通算完封数はこれで18に伸び、江川卓(法大)が持つ東京六大学リーグ記録の17を超えた。メジャーな大学記録で残っているのは山口高志(関大)の19だけ。今季中の山口超えも射程内に入れた。

 完封したと言っても快刀乱麻のピッチングだったわけではない。この日のストレートの最速は3回、2死満塁で対した3番井上彰吾(4年・中堅手・右投左打・181㌢/78㌔)への1ボール2ストライクからの球で、神宮球場のスコアボードには「144」が表示された。しかし、これ以外で140キロを超えたストレートは1球もなかった。

 では変化球がよかったのか、と言うとそうでもない。スライダー、カーブ、ツーシームを投げ分けたが、昨年までのキレ味ではなかった。よかったのは配球である。とくに目立ったのが左右打者に関係なく攻め続けた内角球。このコースでファールを打たせてカウントを稼ぎ、勝負球は高めストレートの吊り球、あるいは98~108キロ程度のスピード帯でアクセントをつけるカーブ、さらにツーシームと投げ分け、打者の感覚を緩急、高低、コーナーの揺さぶりでぐちゃぐちゃにした。

 それから2日後の20日、東浜は再び日大3回戦に登板し、5安打、1失点の完投劇を演じた。ストレートは140キロ台を何球か計測したが、最速は141キロ。相変わらず調子は万全ではない。それでも打者を圧倒できたのは打者の裏をかく配球と、直曲球を自在に操るコントロールがあったからだ。

 1回裏、走者なしで3番井上彰吾を迎えた場面では、8球のうち5球がストレートという想定外の配球で投手ゴロに打ち取っている(結果球はツーシーム)。6回の1死一、三塁の場面では5球のうち4球がストレートで、遊撃ゴロに打ち取っている(結果球はストレート)。

 一番投げにくそうにしていた8番宮守淳貴(3年・遊撃手・右投左打・178㌢/77㌔)には一転して変化球が多くなり、3回の走者なしの場面では6球投げたうち3球がツーシームで、最後は外角低め138キロのストレートで見逃しの三振に打ち取っている。

 東浜を見ているとストレートの速さにどんな意味があるのだろうと、思わされる。この日の第2試合、青山学院大は2対1で東洋大をリードした6回裏、1死一、三塁の場面で守護神・斎藤英輔(3年・右投右打・178㌢/76㌔)をマウンドに送っている。斎藤はこのピンチを最速150キロのストレートで凌ぐが、7回には2死のあと連打を浴びて2点を失い降板している。

 9回まで投げようと力をセーブした途端のKO劇で、緩急やペース配分がいかに難しいか痛感させられた。その部分で東浜は類まれな能力を発揮している。山口高志の持つ19完封超えは単なる通過点になりそうだ。


2012年5月9日(水曜日)くもり 神宮球場

東都大学リーグ

亜細亜大4-0東洋大

 今秋のドラフト1位候補、というより、複数球団の重複が確実視されている東浜巨(亜大4年・投手・右投右打・181㌢/73㌔)が東洋大に完封勝ちし、リーグ通算20完封、30勝を達成した。20完封は主要リーグのものとしては山口高志(関西大→元阪急)の19完封を抜く史上最多、30勝はリーグ通算12人目の快挙となった。

 ストレートはMAX143キロと速くはないが、打たれる気が全然しなかった。前半はストレートと大小2種類の縦系スライダーで打者を翻弄し、3回からはツーシームを加えて、さらに投球の幅を広げた。

 とにかくコントロールがいい。0ストライク3ボールになっても楽にストライクを取ってカウントを整え、3ボール2ストライクになると打者が追いつめられたような雰囲気を周囲に漂わせる。これまで東洋大戦は相性が悪く、完封したことはなかったが、そういう“借り”を一度に返すような完璧なピッチングだった。


2012年6月13日(火曜日) 東京ドーム

大学選手権

亜細亜大4-2八戸大

 優勝候補の亜大が苦戦した。苦戦の原因はエース東浜巨(4年・右投右打)が万全でなかったのと、八戸大の2番手左腕、秋山翔夢(2年・左投左打)が好投したためだ。東浜はこの試合、投げ始めからフィニッシュまでのタイムがリーグ戦にくらべると速くなっていた。

4月18日対日大3被安打完封2.1~2.2秒台
4月20日対日大5被安打1失点2.0~2.2秒台
5月9日対東洋大3被安打完封2.0~2.2秒台
6月13日対八戸大6被安打2失点1.9~2.0秒台

 5月24日の青山学院大戦以来20日ぶりの登板というのが実戦感覚を狂わせた原因だと思うが、次戦の愛知学院大戦も1.9秒台が多かったので心配だ。それでも4安打完封しているところに東浜の凄さがある、と言えば言えるのだが。

 以上のマイナス要素を補うのが変化球のキレと緻密なコントロールで、とくに見事だったのがツーシームを内・外角低めぎりぎりにコントロールするところ。ツーシームはホームベース近くで小さく動くところに特徴があり、打者に手を出させてボールの芯を外すのが目的。緻密にコーナーをつけば手を出してくれない可能性が高く、凡打にできない以上ストライクゾーンに入れて見逃しの三振を取るか、ボールカウントを有利にするしかない。東浜は後者のためにツーシームを投げていた。

 多少コースが甘くても打者が打ち損じる変化球を緻密に両コーナーに配したのは、ラッキーパンチを防ぎたいため。それだけ一発勝負のこの大会に懸ける気持ちが強いということだろう。


2012年10月9日(火曜日)晴れ 神宮球場 

東都大学リーグ

亜細亜大3-1中央大

1位入札候補、東浜巨のベストピッチ

 亜大のドラフト1位入札候補、東浜巨(右投右打・181㌢/73㌔)が見事な投球をした。今秋は9月1日の東洋大戦、9月18日の駒大戦を見たが、首を傾げる内容だった。スピードは9月1日が最速144キロ、9月18日が143キロ、この日が145キロと大して変わらない。失点もそれぞれ1、2、1と少ない。それでもこの日のピッチングが圧倒的によく見えた。投げ始めからフィニッシュまでの投球タイムは、9月1日が1.8~2.1秒、9月18日が1.9~2.1秒、10月9日が2.0~2.3秒と大きな違いが見える。

 9月に取材した藤浪晋太郎(大阪桐蔭)は春が約2.1秒、夏が約1.8秒と投球タイムが速くなっていて、それに対して「あんまりゆっくりだとバラけてしまうので、ポンポンとしっかりリズムを作って」と説明してくれた(雑誌『アマチュア野球』より)。しかし、東浜は沖縄尚学時代から、投球タイムが遅ければ遅いほど投球内容がよくなる。

 ストライク率の高さも好・不調のバロメータである。よくないときは安易にボール球を振らそうと横着なピッチングになるが、この日は低めいっぱいのストライクゾーンにストレート、ツーシームを丁寧に配し、打者を打ち取っていった。3回までに奪った三振は2個。これは東浜にしては少ないペースだ。

 ツーシームを大きく落とさないで小さい変化でストライクゾーンに入れるという意識の徹底がこの三振数に表れていると思う。4~7回までの4イニングは三者凡退で切り抜け、12アウト中、三振が9個とようやくいつものドクターKぶりを発揮している。これは3回までの丁寧なピッチングで、ボール球を振らせる環境が整ったからと見ていいだろう。

 とにかくストレート、ツーシーム、スライダーとすべてのキレ味が素晴らしく、被安打は1回裏、影山潤二(3年・左投左打・173㌢/68㌔)に打たれた中前打のみ。8回はいずれも3ボール2ストライクから四球を3つ与え1死満塁にし、捕手・嶺井博希のミットが打者のバットに当たる打撃妨害で1失点を許した。3回にも2つの死球で一、二塁のピンチはあったが、それ以外は完璧に抑えた。ドラフトを16日後に控え、ようやく本来のピッチングを取り戻した東浜。1位入札で迷う球団のスカウトは、これでまた悩む材料が増えたのではないだろうか。



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